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ヘルシスト 291号

2025年5月10日発行
隔月刊


ゲーテの「立ち机」

ドイツの詩人・作家のヨーハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(1749〜1832年)は、多彩な活躍をした知の巨人といえるでしょう。「野ばら」や「若きウェルテルの悩み」、「ファウスト」など、今も読み継がれる文学作品を残した他、ザクセン=ヴァイマル公国の宰相を務めたほどの官僚であり、また多くの論文を残した自然科学者でもありました。

ゲーテが研究対象とした自然科学とは、植物学、生物学、医学、天文学、鉱物学、光学など多岐にわたっていて、得られた成果を基に、鉱山の再開発や天文台の建設に尽力、公共図書館の公開に努め、宮廷劇場の総監督として公務に腕を振るったともいわれています。もちろん文学作品にも、それらは投影されました。

そして子どもの頃、天然痘にしたゲーテは、芽生え始めた近代医学の健康法にも深い信頼を寄せていたと思われます。それは彼の主治医で種痘の推進者でもあった医師、クリストフ・ヴィルヘルム・フーフェラントが著した養生書の『長寿学』の主旨に沿うように、立ち机を愛用していたからです。

フーフェラントは同著で、学業など過剰な緊張が健康に及ぼす害について説きながら、さらにそれに悪影響を与える要因として、「を丸くする座り方と締め切った部屋の空気」を挙げ、横になったり、立ち上がったり、歩いたり、木馬にまたがったり、戸外に出て適切な運動をすることを勧めています。

ゲーテは書記を座らせて部屋の中を歩き回って口述筆記で創作し、立ち机を使い、旅を好みました。そのかいあってか、80歳を超えてなお旺盛な創作を続けたのです。

オンラインで多くのことが片付いて便利な一方、座りっぱなしが気になっている昨今、日本ではあまり馴染みがなかった立ち机ですが、利用を考えていきたいアイテムではないでしょうか。


スポーツ・運動への関心が年々高くなっています。2023年に実施されたスポーツ庁の世論調査によると、20歳以上で週1日以上のスポーツを実施している人は52.0%。調査を始めた1991年が27.8%でしたので、30年余りで2倍近く伸びた計算です。スポーツ人口が増加している背景には、身体運動が健康維持や生活習慣病予防、治療やリハビリと密接に関連することが明らかにされ、特に高齢者の意識が高まっていることがあるのではないでしょうか。

スポーツも多様化し、ウォーキングのような軽いものからハードなものまで、年齢や環境、好みに応じて幅広く楽しめるようになりました。ただ、それぞれの技術レベルや体への負荷に相応する体力をつける必要があります。体力をつけるには日頃のトレーニングは欠かせませんが、食事もまた重要です。トップアスリートのほとんどは最適な栄養摂取がパフォーマンス向上につながるとして、食事管理をトレーニングの一環と捉えています。トップアスリートも一般の人たちも基本は「バランスよく食べる」ことなのですが、最近はSNSなどから得た根拠のない情報やあいまいな知識に左右される人も少なからずいます。

誤った栄養摂取は健康を損なうリスクが伴います。例えば体重を気にして糖質を極端に制限すると、糖質は体内に多く蓄えられないため筋肉や脂肪を分解して不足した糖質を補います。その結果、運動で獲得した筋肉量は減少します。年齢とともに筋肉量が減りやすくなる高齢者がスポーツや運動をするときには特に留意したい点です。

どんなに年齢を重ねても筋肉はつけられます。高齢者に限らず、スポーツを楽しむすべての人たちにとって大切なことは、バランスよく食べて筋肉量を減らさないことなのです。

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