生物 野本教授の腸内細菌と健康のお話34 発酵食品とプロバイオティクス 発酵食品は「微生物の望ましい増殖と食品成分の酵素的変換によって作られる食品」と解釈されている。多様な発酵基材とこれを発酵させる微生物との組み合わせを有する数多くの発酵食品が世界中に存在する。我々は発酵食品を摂取することにより、同時にそれに含まれている発酵微生物をも摂取することが多い。そういうこともあってか、「発酵食品はプロバイオティクスではないのか?」と聞かれることがあるが、基本的に答えは「No」である。
生物 「細胞と遺伝子」 第21回 オスの細胞で卵子を生成 性を決定する因子はさまざまで、哺乳類や鳥類は性染色体の構成で性が決定する。例えば、ヒトやマウスのオスはX染色体とY染色体が対の「XY」を持ち、メスはX染色体が2つ組み合わさる「XX」を持つ。新たな研究では、オスのマウスのiPS細胞を用い、「XY」のY染色体を消失させ、そこにX染色体を入れることで、卵子になれる「XX」を持つ細胞の生成に成功。この卵子に別のマウスの精子を受精させることで、オス同士で子をつくることが可能になるという。
生物 特集 「糖質」そこが知りたい 代謝で重要な役割を担う「糖鎖」 生命現象を紐解く鍵となるか 糖鎖は、各種の単糖が文字通り鎖のようにつながった糖質の一つで、生体内でタンパク質や脂質と結合することでそれらの機能を調整するとともに、細胞認識や細胞接着といった生命維持に関わるプロセスでも重要な役割を果たす。タンパク質の代謝時期を決める機能も有していて、体内のタンパク質は結合する糖鎖によって生体内や血中内での寿命が決まる。一方、生物に多様な進化をもたらした核酸、タンパク質に次ぐ、生命現象の謎を解く第3の「生命鎖」としても注目される。
生物 野本教授の腸内細菌と健康のお話33 腸内細菌の培養と取り扱い ルイ・パスツール(Louis Pasteur, 1822~1895年)はもともとはフランスの化学者だったが、ワインの発酵や腐敗が酵母や細菌により生じること、さらには、カイコの病気や牧場の牛の炭疽病の問題解決や狂犬病のワクチン開発など、微生物学の領域で偉大な功績を挙げるに至った。
生物 「細胞と遺伝子」 第20回 冬眠の謎に迫る 変温動物は気温が下がると体温も低下するので自動的に休眠状態になる。一方、体温を維持する恒温動物は冬でも生活できるが、クマやリスなどは冬眠する。なぜ冬眠するのか——。代謝を制御し、蓄えた餌や脂肪をちびちび消費して冬場を乗り切るため、というのが大きな理由だが、詳細なメカニズムはまだまだ解明されていない。しかし「生と死」という大きな命題へとつながる奥の深い研究なのだという。
生物 特集 進化する「視覚化」 発光生物のメカニズムを応用する「リアルタイム」での観察 クラゲやホタルなど光を発する生物は、独自の発光メカニズムを持っている。最初に発見されたのは、オワンクラゲの光るタンパク質。その後、この蛍光タンパク質を応用した生体蛍光イメージングが開発され、細胞や組織を「生きたままリアルタイム」で観察できるようになった。結果、生命科学研究は大きく発展。今では、それぞれの生物が持つ発光メカニズムを生かしたイメージングが生み出され、精度の高い「視覚化」が可能に。がん細胞の動態解析など多方面に貢献している。
生物 特集 進化する「視覚化」 なぜ記憶を保持できるのか? 脳の「現場」を見ることで解明 私たちの記憶には、装置となるシナプスと、記憶の“部品”であるタンパク質分子が関与している。実はこのタンパク質分子、常に代謝されてかなり短い期間で入れ替わっているのだ。にもかかわらず、脳は数十年も記憶を保持することができる。まさに生命の奥深さに驚くほかないのだが、シナプスとタンパク質分子の間に、何らかの仕組みが存在するのではないかと考えられている。では実際、どのような仕組みなのか——その謎を解くには、記憶の「現場」を見ることが不可欠だという。
生物 特集 進化する「視覚化」 〈巻頭インタビュー〉細胞内の可視化で生命の原理に迫る! 現代の生物学は、顕微鏡の発明でその端緒が開けたと言ってもいい。そしてDNA二重らせん構造の発見は画期的で、分子生物学という分野が確立された。近年のゲノム配列の解析の成功で、生命の追究が一気に進むかと期待されたが、むしろ謎は深まるばかりだった。つまり遺伝子の情報だけでは、作られるタンパク質がどのように動き、どのように配置されるかが分からないのだ。生命の原理を知るには、動きを実際に見る必要があり、それには生体イメージングが欠かせない。
生物 野本教授の腸内細菌と健康のお話32 身近な動物たちの腸内フローラ 筆者は大学で獣医学を修めたが、卒業後はとんと臨床には関わっておらず、いわゆる「ペーパー獣医師」である。そんなわけで、獣医臨床の記憶として残っているのは、大学3年次終盤の、現在ならインターンシップともいえる臨床獣医研修のみである(現在の大学の獣医学教育は6年制であるが、筆者が学んだ当時は4年制)。
生物 「細胞と遺伝子」 第19回 ベニクラゲの「若返り遺伝子」 老化は宿命、とされているが、なんと若返ることができる生物が存在する。体長4~10㎜の小さなベニクラゲは、危機的状況に陥るとポリプと呼ばれる成長段階の若い形態に戻ることができる。若返るというのは、細胞を未分化の状態に戻してから、再び若い細胞に分化させることだ。この若返り機構に特異的に働いている遺伝子配列が解読された。ヒトへの応用はさすがに難しいが、肌の老化を遅らせることなどは可能性があるかもしれないという。