生物 野本教授の腸内細菌と健康のお話38 ビフィズス菌の腸内定着 ヒト腸内の最優勢嫌気性菌群の一種であるビフィズス菌は、パリのパスツール研究所附属病院に小児科医として勤務していたアンリ・ティシエ(Henri Tissier、1866〜1916年)によって、小児便から分離された。
生物 「細胞と遺伝子」 第25回 Y染色体はやがて消滅する! 染色体は、DNAがヒストンというタンパク質に巻き付いて形成される棒状の複合体で、細胞の核の中に対になって格納されている。ちなみに人間の染色体は23対あり、その中の1対がXとYの性染色体だ。そのうち男性の染色体とされるY染色体が実は退化していて、やがて消滅する運命にあるのだという。ただ、Y染色体がすでに消滅しているアマミトゲネズミでは性染色体以外から、性決定をつかさどる領域が発見されている。男性が消えてしまう恐れはないのだろうか。
生物 野本教授の腸内細菌と健康のお話37 腸内フローラによる免疫修飾 David P. Strachanは、1958年の3月に誕生した1万7000人を超える英国人を対象とする疫学調査を実施し、被験者の11歳および23歳の時点のそれぞれから1年間遡った期間における花粉症の有病率は、家族内の同胞の数、特に兄や姉の数と有意な負の相関関係を示すことを見出した。
生物 「細胞と遺伝子」 第24回 心理的要因による発熱のメカニズム 人間の体温は脳にある体温調節中枢で37℃前後に保つよう調節されており、何かの原因で感染症にかかったときは、病原体を排除するため体温を上昇させることは知られている。一方、病気でなくても心理的要因から発熱することがあり、こちらのメカニズムはほとんど分かっていなかった。しかし最近の研究により、心の状態が体温調節に影響する仕組みが明らかにされつつある。心因性発熱の仕組みが解明されれば、心と体をつなぐ神経回路が見えてくる。
生物 特集 ミツバチの世界 行動や食生活にも関与!? ミツバチの特徴的な腸内細菌 ミツバチも腸内細菌を持っているが、非常に特徴的だという。ヒトの腸内細菌叢を構成する腸内細菌は1000種類、100兆個ともいわれているのに対し、ミツバチの腸内細菌叢は、わずか8~10属程度の腸内細菌が全体の95%を占める。例えばミツバチ自身では分解が難しい、いくつかの花粉の成分の分解を腸内細菌がサポートするなど、このわずかな種類の腸内細菌とミツバチは相互に影響し合いながら共生している。また、行動にも腸内細菌が関与している可能性があるという。
生物 特集 ミツバチの世界 ニホンミツバチのゲノム解析がミツバチの減少抑制につながる! ミツバチの数が減っている。特に養蜂の主力であるセイヨウミツバチの減少が著しい。さまざまな原因が推察されるが、その中で直接的な影響を持つものに、ミツバチヘギイタダニが媒介する病気と天敵スズメバチがある。一方、日本の在来種であるニホンミツバチは、ダニに対する耐性があり、さらにスズメバチを撃退する熱殺蜂球と呼ばれる手段を有する。ニホンミツバチの遺伝子解析は、本種の保全、さらに、ミツバチの品種改良へと応用できる可能性があるという。
生物 特集 ミツバチの世界 〈巻頭インタビュー〉多様な社会的行動を持つ 人類には欠かせない昆虫 ミツバチと人類の関係は古代より続いており、今から4000年以上前の古代エジプト時代にはすでに、養蜂が行われていた。ミツバチの産生物は長い間、貴重な栄養源として重宝され続けてきたが、今では、花粉を媒介する送粉者として農作物生産にも欠かせない昆虫として知られるようになった。一方で、「8の字ダンス」をはじめ、巧みなコミュニケーションから成り立つ多様で複雑な社会的行動を持つ進化した社会性昆虫には、解明されていない謎も多い。今後の研究が期待される。
生物 野本教授の腸内細菌と健康のお話36 腸内細菌研究の仲間たち 発酵食品は「微生物の望ましい増殖と食品成分の酵素的変換によって作られる食品」と解釈されている。多様な発酵基材とこれを発酵させる微生物との組み合わせを有する数多くの発酵食品が世界中に存在する。我々は発酵食品を摂取することにより、同時にそれに含まれている発酵微生物をも摂取することが多い。そういうこともあってか、「発酵食品はプロバイオティクスではないのか?」と聞かれることがあるが、基本的に答えは「No」である。
生物 「細胞と遺伝子」 第23回 セロトニンは努力行動の楽観と悲観に関与する 「幸せホルモン」として知られるセロトニンは脳内の神経伝達物質の一つで、脳の広い範囲に作用して精神を安定させる作用を持つが、具体的なメカニズムは解明されていない。しかし最近の研究で、目標達成のプロセスにおける努力行動の過程で、「きっとうまくいく」という楽観と「どうせだめだ」という悲観の調整にセロトニンが関与しているという研究成果が明らかになった。つまりセロトニンは結果よりもむしろプロセスに作用するという。幸福感は努力過程にもある。
生物 特集 腸内細菌最前線 疾病予防や治療につながる「共多様化」した菌種の探索 ヒトと長く共生してきた腸内細菌は多様化、つまり共多様化する。共多様化した腸内細菌は免疫システムや健康に影響を与えているが一方で、どの種がどの程度、ヒトと共進化しているかは明らかになっていない。共進化とは、環境を共有する生物同士がお互いに影響し合って進化することで、共進化した菌はヒトの進化を知る上でも、腸内細菌の健康や疾病への関与を探る手掛かりとしても重要だという。共多様化した菌種の探索は、共進化した菌種を探す第一歩となる。