生物 野本教授の腸内細菌と健康のお話30 腸内フローラの多様性 「ダイバーシティ」というカタカナ英語が一般化するくらい、多様性の概念が浸透している。腸内フローラの網羅的な遺伝子解析では構成菌の種類の多少がα多様性として判断され、個体内の単純な菌種数を反映する指標から、これに菌種数の均等度も加味した指標まで用意されている。
生物 「細胞と遺伝子」 第17回 「生身」の皮膚をまとったヒューマノイド 近年、ロボットは格段の進歩を遂げ、機能や動作の完成度は目を見張るものがある。中でも人間の姿をしたヒューマノイドは、その多様な可能性から注目されている。しかし皮膚はシリコンゴムでできていて、見た目もさることながら、質感は少々不気味だ。もし生きている皮膚組織をまとうことができたら不気味さも解消し、人間により近づける―。このような生体素材と機械の融合の研究が進んでいる。SFの世界がいよいよ現実になりつつある。
生物 特集 血管を知る 「動脈疾患」に関与する「細胞外環境」のタンパク質 細胞と細胞の間にある細胞外環境は、細胞から分泌されるタンパク質などで構成され、細胞の機能と深く関与する。血管細胞でも同様で、血圧と血流のストレスにさらされている動脈においては、血管細胞の一つである平滑筋細胞が分泌するタンパク質・エラスチンが主成分の、ゴムのような伸縮性を持つ弾性線維が、大動脈瘤(りゅう)や大動脈解離などの動脈疾患と深く関わっていることがわかってきた。細胞外環境を用いて発症を予測する「バイオマーカー」の研究も進行中だ。
生物 特集 血管を知る 〈巻頭インタビュー〉思いもよらない多様性——謎多き「構造」と「機能」 血管は生体にとってとても重要な器官だ。しかし今なお、解明されない構造や機能は多数存在している。臨床現場では、説明のつかない状態の血管を見ることも少なくないという。そんな謎を解くために開発された高解像度3次元イメージング技術は、血管網の精緻な可視化を実現した。その結果、これまで想像でしか描かれてこなかった各臓器の血管網が、思いもよらない多様性を持つことが見えてきた。こうして得た新たな発見はやがて、さまざまな疾病の治療につながるはずだ。
生物 野本教授の腸内細菌と健康のお話29 胆汁酸と腸内フローラ 筆者が担当する「動物生理学」の講義では、学科学生を対象として、身体を構成する器官の構造や生理機能をわかりやすく解説している。中でも、専門の「臨床腸内細菌学」(ヒトや我々の身近な動物の健康と腸内フローラとの関連を探ることを ……
生物 特集 においの科学 心理・行動に影響を与えるにおいと受容体の仕組み 嗅覚を通じた刺激は、快・不快などの心理のみならず、何らかの行動を誘発することがある。におい成分がもたらす恐怖感と忌避行動に関する研究は、野生動物による食害防止策などにすでに応用されているが、嗅覚のにおい受容体がヒトの行動にも影響を与えていることが近年明らかになってきた。分娩を促すオキシトシンというホルモンは“幸福ホルモン”としても知られるが、さまざまな社会行動や嗅覚機能を調整する神経伝達物質としても受容体に作用する。
生物 特集 においの科学 難しいとされた再現に成功 「匂い」は伝えられる! どうしたら匂いを伝えることができるのか——。例えば視覚の三原色は色を再現する基本的な要素だが、嗅覚は受容体が約400種あり、“原臭”ともいうべき基準が存在しない。そのため匂いの再現は難しいとされてきたが、ようやく道筋が見えてきた。まず、基本となる匂いの要素を選定、調合することで多様な匂いのベースとなる「要素臭」を作る。その要素臭を「嗅覚ディスプレイ」でさまざまに組み合わせて提示すれば、離れた場所でも匂いを再現することができるという。
生物 特集 においの科学 〈巻頭インタビュー〉おいしさを感じる嗅覚は人類進化の謎を解く鍵!? 哺乳類の持つ嗅覚は、環境に応じて進化した五感の中で最も起源の古い機能だ。天敵から身を守る、腐敗したものを避けるなど、生存に関わる重要な感覚だが、人間にとっては、おいしく食べる、という意味合いも大きい。より良い食べ物を得るために脳が発達し、おいしいものを追求してさらに脳は大きくなる―こうした相乗作用もヒトの嗅覚にはあるのではないかという。こうしてヒトが特異的に進化させてきた嗅覚は、人類進化の謎を解く鍵となるかもしれない。
生物 野本教授の腸内細菌と健康のお話28 マイナーだけど重要な腸内通性嫌気性菌群 ヒト腸内フローラの主な生息部位である下部腸管の最優勢菌群は、Firmicutes門(新分類ではBacillota門)やBacteroidetes門(同、Bacteroidota門)に属する。一方で、生育に対する酸素の影響 ……
生物 野本教授の腸内細菌と健康のお話27 「科学技術英語」考 ウェブ環境の発達は論文などの学術報告の推進に寄与している。オンラインジャーナルは、論文の投稿から掲載までの時間をかなり短縮したし、オンラインで無料で制約なしに閲覧が可能なオープンアクセスジャーナルも増えている。生命科学の ……