生物 暮らしの科学 第64回 セミはなぜ鳴くのか!? 鳴き声から生態を知る 春雷、梅雨の雨音。こんなふうに季節を象徴する音がある。夏の音といえば、蟬時雨だろう。それにしても、なぜセミは鳴くのか? 今回は、セミの鳴き声を視点に、知っているようで意外に知らない生態を探ってみた。
生物 野本教授の腸内細菌と健康のお話40 「他人の釜の飯」 筆者が学んだ1975〜1979年の獣医学は4年制(現在は6年制)で、基礎から臨床まで履修内容が膨大であり、4年生時の指導は「とにかく獣医師国家試験合格を優先すること」であったから、所属研究室(家畜微生物学)では満足な研究修業に至らなかった。従って、卒業とともに企業の研究所(東京都国立市谷保)で希望する微生物学の研究職に就くことはできたけれども、何しろ基本ができていないから、入社してしばらくは自らの不出来に鬱々とした状況が続いた。
生物 「細胞と遺伝子」 第27回 エピゲノムは細胞分化の取扱説明書 受精卵が細胞分裂を繰り返し、各器官に分化して体は形成される。生命の根源ともいえるこの仕組みには、遺伝子の活性化・不活性化を制御するエピジェネティクスと呼ばれる制御機構が関わる。その「取扱説明書」ともいえるエピゲノムはゲノムを化学修飾したもので、卵子と精子に存在し受精後に初期化される。ところが、一部に初期化されない領域があり、その情報は組織に伝わる。一方、化学修飾は化学反応であるため、エピゲノムは環境の影響を受けるという。
生物 野本教授の腸内細菌と健康のお話39 プロバイオティクスの新たな戦略に向けて 知人が地方都市の中核医療施設で「食道胃接合部がん」と診断され、担当の医師から、より専門の施設での治療が必要と示唆された。施設間の地域連携システムを介して国立のがん専門病院を新たに受診し、ここでの綿密な検査を経て、症状の進行状況に応じた薬物療法が適用されることとなった。
生物 特集 血液のしくみと働き 赤血球がカギを握る“イモリ型再生医療”への期待 イモリに損傷した組織を復元させる高い再生能力があることはよく知られているが、そのしくみは解明されてこなかった。しかし最新のゲノム解析を用いた研究で、一部の赤血球に特異的に発現する再生遺伝子が見つかった。その赤血球は全体の約25%を占め、他の赤血球と共に全身を循環している。赤血球は、酸素を体の各組織に送り、二酸化炭素を受け取るガス交換の役割を果たしている。このしくみを応用して、ヒトの再生医療に役立つ “イモリ型再生医療”の研究が進んでいる。
生物 野本教授の腸内細菌と健康のお話38 ビフィズス菌の腸内定着 ヒト腸内の最優勢嫌気性菌群の一種であるビフィズス菌は、パリのパスツール研究所附属病院に小児科医として勤務していたアンリ・ティシエ(Henri Tissier、1866〜1916年)によって、小児便から分離された。
生物 「細胞と遺伝子」 第25回 Y染色体はやがて消滅する! 染色体は、DNAがヒストンというタンパク質に巻き付いて形成される棒状の複合体で、細胞の核の中に対になって格納されている。ちなみに人間の染色体は23対あり、その中の1対がXとYの性染色体だ。そのうち男性の染色体とされるY染色体が実は退化していて、やがて消滅する運命にあるのだという。ただ、Y染色体がすでに消滅しているアマミトゲネズミでは性染色体以外から、性決定をつかさどる領域が発見されている。男性が消えてしまう恐れはないのだろうか。
生物 野本教授の腸内細菌と健康のお話37 腸内フローラによる免疫修飾 David P. Strachanは、1958年の3月に誕生した1万7000人を超える英国人を対象とする疫学調査を実施し、被験者の11歳および23歳の時点のそれぞれから1年間遡った期間における花粉症の有病率は、家族内の同胞の数、特に兄や姉の数と有意な負の相関関係を示すことを見出した。
生物 「細胞と遺伝子」 第24回 心理的要因による発熱のメカニズム 人間の体温は脳にある体温調節中枢で37℃前後に保つよう調節されており、何かの原因で感染症にかかったときは、病原体を排除するため体温を上昇させることは知られている。一方、病気でなくても心理的要因から発熱することがあり、こちらのメカニズムはほとんど分かっていなかった。しかし最近の研究により、心の状態が体温調節に影響する仕組みが明らかにされつつある。心因性発熱の仕組みが解明されれば、心と体をつなぐ神経回路が見えてくる。
生物 特集 ミツバチの世界 行動や食生活にも関与!? ミツバチの特徴的な腸内細菌 ミツバチも腸内細菌を持っているが、非常に特徴的だという。ヒトの腸内細菌叢を構成する腸内細菌は1000種類、100兆個ともいわれているのに対し、ミツバチの腸内細菌叢は、わずか8~10属程度の腸内細菌が全体の95%を占める。例えばミツバチ自身では分解が難しい、いくつかの花粉の成分の分解を腸内細菌がサポートするなど、このわずかな種類の腸内細菌とミツバチは相互に影響し合いながら共生している。また、行動にも腸内細菌が関与している可能性があるという。