生物 NEW 野本教授の腸内細菌と健康のお話44 腸内細菌の日和見性 我々の共生微生物群である腸内細菌叢の中で、健康の維持促進に資する微生物を「善玉菌」と呼び、その逆を「悪玉菌」と呼ぶ、いわば情緒的な表現が一般化している。
食 気になる人の「気にする食卓」第90回 麻倉未稀 TVドラマの主題歌が大ヒットし、全国各地を駆け巡り忙しい日々を過ごしていた麻倉未稀さん。ある日、TV番組の企画で人間ドックを受診したところ乳がんが見つかり、全摘出と同時に乳房再建手術を受けた。その経験を生かし、麻倉さんはがんに関わるNPO法人を立ち上げ、検診の大切さなどを多くの人に訴えている。
生物 細胞と遺伝子 第31回 がんゲノムの突然変異には特有のパターンがあった! がん化に関わる遺伝子が突然変異を起こし、それが蓄積することで正常細胞はがん細胞に変化する。近年の大規模がんゲノム解析で、さまざまな原因によって引き起こされる突然変異には「変異シグネチャー」と呼ばれる特有のパターンが50種類以上存在することが明らかになった。変異シグネチャーは喫煙や紫外線などの発がん要因と密接に関連していることから、解析が進めば危険因子を正確に特定することができ、発生メカニズムの解明にもつながると考えられている。
医学 忍び寄る吸血性昆虫 ダニ媒介感染症は重症化も! 野外での活動には要注意 室内にいるイエダニなどに刺されるとかゆみを伴う炎症を引き起こすが、重症には至らない。しかし、野外には感染症を引き起こすダニがいる。特にマダニは、10年ほど前に発見された重症熱性血小板減少症候群という重篤な感染症の原因となるウイルスを媒介する。森林の中の野生動物を宿主として生息していたのだが、近年の環境変化で野生動物と人間の距離が近くなった結果、生活圏内でも見られるようになった。西日本中心の発生地域は東に拡大し、症例は増加傾向にある。
医学 忍び寄る吸血性昆虫 世界的人流の活発化で急増! トコジラミの「傾向と対策」 トコジラミは南京虫とも呼ばれ、日本でもかつては普通に見かけた、刺されるとやっかいな吸血性昆虫だが、殺虫剤の普及に伴い1970年代にはすでに繁殖は収束していた。しかし近年、世界的な人流の活発化で日本に持ち込まれることが増え、トコジラミ被害が再び増加している。刺されると強いかゆみを伴う皮疹が発症するが、1~2週間で良くなるという。宿泊施設の部屋から持ち帰ることが多いため、トコジラミが好む寝具周辺には衣類など荷物を置かないようにしたい。
生物 特集 謎多き渡り鳥 日本⇄オーストラリア4万㎞! ハリオアマツバメの渡りルート 水平飛行速度最速の渡り鳥として知られるハリオアマツバメは、春、暖かな日本で巣作り・産卵・子育てを行い、秋の訪れとともにオーストラリアへと移動する。しかし子育て以外は空を飛びながら生活しているため観察は極めて難しく、その渡りルートは解明されてこなかった。しかし、小さな記録装置を装着したハリオアマツバメの追跡調査に成功。春と秋の正確な渡りの経路がついに判明した。日本⇄オーストラリアの8の字を描く往復ルートは最短ではなく、じつに4万㎞にも及んでいた。
生物 特集 謎多き渡り鳥 網膜内の光化学反応で地磁気を見ることができる!? 鳥をはじめ多くの生物には、地磁気を検知する「コンパス」が備わっていると考えられている。では鳥のコンパスとはどのようなものなのか——さまざまな仮説が存在するが、生体内における分子レベルでの物理現象を解明する量子生命科学による、新たな仮説「ラジカル対機構説」が提唱され、メカニズムの解明が進んでいる。鳥の網膜内にある光受容体は青色光によって活性して磁石の性質を持ち、地磁気に反応。そのシグナルが視覚に作用することで、鳥は方向を視覚的に捉えるのだという。
生物 特集 謎多き渡り鳥 豊富なデータと最新機器でスピードアップする生態解明 山階芳麿博士が1932年に私財を投じて設立した山階家鳥類標本館をルーツに持つ山階鳥類研究所は、日本の鳥類研究の礎だ。ベトナム戦争時、米軍からの依頼で再開した日本脳炎の感染に関わるサギなどの渡り鳥に足環を着けて行う調査が、現在の鳥類標識調査へと受け継がれている。今では約400人のボランティアに加え、市民からも情報が寄せられる。最新機器も登場し、さまざまな方法が確立している。長年の調査で蓄積された豊富なデータにより生態解明がスピードアップしている。
生物 特集 謎多き渡り鳥 〈巻頭インタビュー〉市民協力と衛星追跡調査から浮かび上がった意外な経路 行動範囲が地球規模の渡り鳥の調査はとても難しく、長いあいだ生態のほとんどは解明されてこなかった。多くの人は謎多き渡り鳥に惹かれ、季節や旅情を感じ、渡り先に思いをはせた。1990年代に人工衛星を利用した追跡調査が始まると、科学技術を利用した渡りを追跡する方法が確立され、謎だった経路や行動が見え始めてきた。一方、個体を実際に見て観察する野外調査も、多くの市民の協力を得て結果を出している。科学技術と連携することで新たな事実が発見される。
社会 暮らしの科学 第67回 寒くて長い冬の夜は体の芯から温まりたい! 季節の植物を湯船に浮かべるのは、端午の節句の菖蒲湯と冬至の柚子湯だけかと思っていた。ところが、新年にもそんな季節の行事があり、不老長寿の象徴として知られる松の葉を用いると、体が芯から温まるという。今回は東洋医学の視点から、薬湯を探究してみた。