生物 「細胞と遺伝子」 第25回 Y染色体はやがて消滅する! 染色体は、DNAがヒストンというタンパク質に巻き付いて形成される棒状の複合体で、細胞の核の中に対になって格納されている。ちなみに人間の染色体は23対あり、その中の1対がXとYの性染色体だ。そのうち男性の染色体とされるY染色体が実は退化していて、やがて消滅する運命にあるのだという。ただ、Y染色体がすでに消滅しているアマミトゲネズミでは性染色体以外から、性決定をつかさどる領域が発見されている。男性が消えてしまう恐れはないのだろうか。
生物 「細胞と遺伝子」 第24回 心理的要因による発熱のメカニズム 人間の体温は脳にある体温調節中枢で37℃前後に保つよう調節されており、何かの原因で感染症にかかったときは、病原体を排除するため体温を上昇させることは知られている。一方、病気でなくても心理的要因から発熱することがあり、こちらのメカニズムはほとんど分かっていなかった。しかし最近の研究により、心の状態が体温調節に影響する仕組みが明らかにされつつある。心因性発熱の仕組みが解明されれば、心と体をつなぐ神経回路が見えてくる。
生物 「細胞と遺伝子」 第23回 セロトニンは努力行動の楽観と悲観に関与する 「幸せホルモン」として知られるセロトニンは脳内の神経伝達物質の一つで、脳の広い範囲に作用して精神を安定させる作用を持つが、具体的なメカニズムは解明されていない。しかし最近の研究で、目標達成のプロセスにおける努力行動の過程で、「きっとうまくいく」という楽観と「どうせだめだ」という悲観の調整にセロトニンが関与しているという研究成果が明らかになった。つまりセロトニンは結果よりもむしろプロセスに作用するという。幸福感は努力過程にもある。
生物 「細胞と遺伝子」 第22回 「リュウグウ」の粒子に生命の謎を解く鍵があった! 日本の小惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星「リュウグウ」へのタッチダウンを成功させ、5.4ɡのサンプルを地球に持ち帰ったのは2020年12月のことだった。 それから約2年がたった今年3月、このサンプルの分析結果が社会に大き ……
生物 「細胞と遺伝子」 第21回 オスの細胞で卵子を生成 性を決定する因子はさまざまで、哺乳類や鳥類は性染色体の構成で性が決定する。例えば、ヒトやマウスのオスはX染色体とY染色体が対の「XY」を持ち、メスはX染色体が2つ組み合わさる「XX」を持つ。新たな研究では、オスのマウスのiPS細胞を用い、「XY」のY染色体を消失させ、そこにX染色体を入れることで、卵子になれる「XX」を持つ細胞の生成に成功。この卵子に別のマウスの精子を受精させることで、オス同士で子をつくることが可能になるという。
生物 「細胞と遺伝子」 第20回 冬眠の謎に迫る 変温動物は気温が下がると体温も低下するので自動的に休眠状態になる。一方、体温を維持する恒温動物は冬でも生活できるが、クマやリスなどは冬眠する。なぜ冬眠するのか——。代謝を制御し、蓄えた餌や脂肪をちびちび消費して冬場を乗り切るため、というのが大きな理由だが、詳細なメカニズムはまだまだ解明されていない。しかし「生と死」という大きな命題へとつながる奥の深い研究なのだという。
生物 「細胞と遺伝子」 第19回 ベニクラゲの「若返り遺伝子」 老化は宿命、とされているが、なんと若返ることができる生物が存在する。体長4~10㎜の小さなベニクラゲは、危機的状況に陥るとポリプと呼ばれる成長段階の若い形態に戻ることができる。若返るというのは、細胞を未分化の状態に戻してから、再び若い細胞に分化させることだ。この若返り機構に特異的に働いている遺伝子配列が解読された。ヒトへの応用はさすがに難しいが、肌の老化を遅らせることなどは可能性があるかもしれないという。
生物 「細胞と遺伝子」 第18回 生物と物質をつなぐプロセス 「生きている」ように動くロボットは生物学的には生きてはいないが、視点を変えて工学的な立場で考えると、「生きている」細胞は、情報処理能力と運動機能を備えたロボット的なものともいえる。生物と物質は完全に分断されるものではなく、そのあいだには連続性が存在するはずだという。生物と物質をつなぐプロセスが理解できれば、例えば免疫細胞のようなものや、脳のようなコンピュータを作ることができるかもしれない。
生物 「細胞と遺伝子」 第17回 「生身」の皮膚をまとったヒューマノイド 近年、ロボットは格段の進歩を遂げ、機能や動作の完成度は目を見張るものがある。中でも人間の姿をしたヒューマノイドは、その多様な可能性から注目されている。しかし皮膚はシリコンゴムでできていて、見た目もさることながら、質感は少々不気味だ。もし生きている皮膚組織をまとうことができたら不気味さも解消し、人間により近づける―。このような生体素材と機械の融合の研究が進んでいる。SFの世界がいよいよ現実になりつつある。
医学 「細胞と遺伝子」 第16回 「細胞老化」は「COVID-19」にも関与する! がん遺伝子の活性化や過度なストレスなどによってDNAが大きな損傷を受けたとき、細胞は自らを破壊してがん化を防ぐ(アポトーシス)。また、細胞分裂を停止したものの死なずに体内に長期間存在し続ける細胞老化も同様に機能する。しかしこの細胞老化の最大の問題点は、さまざまな炎症性物質を分泌するSASPを誘引することで、加齢性疾患を招き、高齢者や糖尿病などの人でCOVID-19が重症化しやすくなったり、後遺症の要因になったりするという。