生物 野本教授の腸内細菌と健康のお話32 身近な動物たちの腸内フローラ 筆者は大学で獣医学を修めたが、卒業後はとんと臨床には関わっておらず、いわゆる「ペーパー獣医師」である。そんなわけで、獣医臨床の記憶として残っているのは、大学3年次終盤の、現在ならインターンシップともいえる臨床獣医研修のみである(現在の大学の獣医学教育は6年制であるが、筆者が学んだ当時は4年制)。
生物 野本教授の腸内細菌と健康のお話31 プロバイオティクスの菌種と菌株——どちらが大事か メジャーリーグベースボールの大谷翔平選手や将棋界の藤井聡太棋士など、近年の各界における若者たちの活躍は、頼もしいと感じるばかりである。個の特長が極めて鮮明に表れているといえる。腸内細菌の世界において、同じ菌種でありながら機能的に異なる菌株(strain)が存在することも同様である。
生物 野本教授の腸内細菌と健康のお話30 腸内フローラの多様性 「ダイバーシティ」というカタカナ英語が一般化するくらい、多様性の概念が浸透している。腸内フローラの網羅的な遺伝子解析では構成菌の種類の多少がα多様性として判断され、個体内の単純な菌種数を反映する指標から、これに菌種数の均等度も加味した指標まで用意されている。
生物 野本教授の腸内細菌と健康のお話29 胆汁酸と腸内フローラ 筆者が担当する「動物生理学」の講義では、学科学生を対象として、身体を構成する器官の構造や生理機能をわかりやすく解説している。中でも、専門の「臨床腸内細菌学」(ヒトや我々の身近な動物の健康と腸内フローラとの関連を探ることを ……
生物 野本教授の腸内細菌と健康のお話28 マイナーだけど重要な腸内通性嫌気性菌群 ヒト腸内フローラの主な生息部位である下部腸管の最優勢菌群は、Firmicutes門(新分類ではBacillota門)やBacteroidetes門(同、Bacteroidota門)に属する。一方で、生育に対する酸素の影響 ……
生物 野本教授の腸内細菌と健康のお話27 「科学技術英語」考 ウェブ環境の発達は論文などの学術報告の推進に寄与している。オンラインジャーナルは、論文の投稿から掲載までの時間をかなり短縮したし、オンラインで無料で制約なしに閲覧が可能なオープンアクセスジャーナルも増えている。生命科学の ……
生物 野本教授の腸内細菌と健康のお話26 プロバイオティクスの保健機能食品としての規制状況 本邦では、保健機能食品(特定保健用食品〈通称:トクホ、1991年9月より制度施行〉、栄養機能食品〈ビタミン、ミネラル〉、機能性表示食品〈2015年4月より制度施行〉)といった枠組みにおいて、食品の保健機能を謳うことが可能である。プロバイオティクスについても同様であり、トクホや機能性表示食品として実に多様なプロバイオティクス菌株の保健作用が謳われているかを、管轄の消費者庁のホームページを通じて知ることができる。
生物 野本教授の腸内細菌と健康のお話25 生体防御に貢献している腸内有機酸 腸内の有機酸は、主に下部消化管において常在性の嫌気性菌により産生される。ヒトのみならず豚、犬や猫などの伴侶動物、あるいはマウスといった実験動物においても、このような腸内細菌による有機酸産生は同様である。
生物 野本教授の腸内細菌と健康のお話24 次世代プロバイオティクスを探る腸内嫌気性菌の培養法 腸内細菌のほとんどは下部消化管(主に大腸)に生息している。その主体は、嫌気性菌と呼ばれる酸素を嫌う(酸素のある〈好気〉条件下では増えることができない)細菌群である。
生物 野本教授の腸内細菌と健康のお話23 肥満やがん免疫でも注目される腸内微生物の関わり 「肥満」と腸内フローラ異常に関する学術文献数は年次ごとに右肩上がりに増えていることをターンボー博士が報告している(図)。この状況は、本コラムが開始された2018年から現在まで全く同様であり、我々の健康と腸内フローラに関する学術研究の進展を象徴している。