生物 「細胞と遺伝子」 第29回 なぜメスのほうが長生きなのか 多くの生き物でメスのほうがオスよりも寿命が長い、ということは古くから知られている。しかし、そのメカニズムは依然として解明されていない。寿命のメカニズムを知るためには、実験動物での解析が必要であったが、マウスなどの実験動物の寿命の長さがボトルネックとなり研究が進んでいなかった。この度、脊椎動物の中で最も短命なキリフィッシュの研究で、生殖細胞が寿命に関与する機序の一部が明らかにされた。
生物 野本教授の腸内細菌と健康のお話41 「まずは安全であること」 プロバイオティクス(適正量を摂取することにより、我々の健康に有益な作用を発揮する生きた微生物)の要件として、生きた菌として提供されるからには、まずは安全であること、が最も重要であると考える。
生物 「細胞と遺伝子」 第28回 老化・寿命と睡眠を結ぶ鍵となる神経細胞 睡眠時間の減少、幾度も目が覚めるなど、睡眠の質の低下は加齢に伴い顕著になる。最近の研究で、脳内のある神経細胞が、老化の過程における睡眠の質の低下に関係していることが明らかになった。マウスの実験では、神経細胞にあるPrdm13という分子が睡眠の質に大きく関与し、睡眠の不具合による老化の促進や、寿命への悪影響が証明されたという。Prdm13は老化・寿命と睡眠を結ぶ鍵となる物質と考えられ、ヒトへの応用が期待される。
生物 暮らしの科学 第64回 セミはなぜ鳴くのか!? 鳴き声から生態を知る 春雷、梅雨の雨音。こんなふうに季節を象徴する音がある。夏の音といえば、蟬時雨だろう。それにしても、なぜセミは鳴くのか? 今回は、セミの鳴き声を視点に、知っているようで意外に知らない生態を探ってみた。
生物 野本教授の腸内細菌と健康のお話40 「他人の釜の飯」 筆者が学んだ1975〜1979年の獣医学は4年制(現在は6年制)で、基礎から臨床まで履修内容が膨大であり、4年生時の指導は「とにかく獣医師国家試験合格を優先すること」であったから、所属研究室(家畜微生物学)では満足な研究修業に至らなかった。従って、卒業とともに企業の研究所(東京都国立市谷保)で希望する微生物学の研究職に就くことはできたけれども、何しろ基本ができていないから、入社してしばらくは自らの不出来に鬱々とした状況が続いた。
生物 「細胞と遺伝子」 第27回 エピゲノムは細胞分化の取扱説明書 受精卵が細胞分裂を繰り返し、各器官に分化して体は形成される。生命の根源ともいえるこの仕組みには、遺伝子の活性化・不活性化を制御するエピジェネティクスと呼ばれる制御機構が関わる。その「取扱説明書」ともいえるエピゲノムはゲノムを化学修飾したもので、卵子と精子に存在し受精後に初期化される。ところが、一部に初期化されない領域があり、その情報は組織に伝わる。一方、化学修飾は化学反応であるため、エピゲノムは環境の影響を受けるという。
生物 野本教授の腸内細菌と健康のお話39 プロバイオティクスの新たな戦略に向けて 知人が地方都市の中核医療施設で「食道胃接合部がん」と診断され、担当の医師から、より専門の施設での治療が必要と示唆された。施設間の地域連携システムを介して国立のがん専門病院を新たに受診し、ここでの綿密な検査を経て、症状の進行状況に応じた薬物療法が適用されることとなった。
生物 特集 血液のしくみと働き 赤血球がカギを握る“イモリ型再生医療”への期待 イモリに損傷した組織を復元させる高い再生能力があることはよく知られているが、そのしくみは解明されてこなかった。しかし最新のゲノム解析を用いた研究で、一部の赤血球に特異的に発現する再生遺伝子が見つかった。その赤血球は全体の約25%を占め、他の赤血球と共に全身を循環している。赤血球は、酸素を体の各組織に送り、二酸化炭素を受け取るガス交換の役割を果たしている。このしくみを応用して、ヒトの再生医療に役立つ “イモリ型再生医療”の研究が進んでいる。
生物 野本教授の腸内細菌と健康のお話38 ビフィズス菌の腸内定着 ヒト腸内の最優勢嫌気性菌群の一種であるビフィズス菌は、パリのパスツール研究所附属病院に小児科医として勤務していたアンリ・ティシエ(Henri Tissier、1866〜1916年)によって、小児便から分離された。
生物 「細胞と遺伝子」 第25回 Y染色体はやがて消滅する! 染色体は、DNAがヒストンというタンパク質に巻き付いて形成される棒状の複合体で、細胞の核の中に対になって格納されている。ちなみに人間の染色体は23対あり、その中の1対がXとYの性染色体だ。そのうち男性の染色体とされるY染色体が実は退化していて、やがて消滅する運命にあるのだという。ただ、Y染色体がすでに消滅しているアマミトゲネズミでは性染色体以外から、性決定をつかさどる領域が発見されている。男性が消えてしまう恐れはないのだろうか。