気になる人の「気にする食卓」第90回 麻倉未稀

構成/編集部  写真/細田 忠

HEALTHIST INTERVIEW

麻倉未稀(あさくら・みき)

(歌手)

1960年7月27日生まれ、大阪府出身。1981年にCMソング「ミスティ・トワイライト」で歌手デビュー。1983年に洋楽カバーの「What a feeling~FLASH DANCE」、1984年に「HERO」が爆発的にヒットする。2017年に乳がん全摘出および乳房再建手術を受け、翌年に「ピンクリボンふじさわ」を立ち上げる。現在は、歌手活動とともにがん予防・検診の推進、啓発活動に尽力している。

乳がん検診の受診率アップを目指し
自分の経験を多くの人に伝えていきたい

TVドラマの主題歌が大ヒットし、全国各地を駆け巡り忙しい日々を過ごしていた麻倉未稀さん。ある日、TV番組の企画で人間ドックを受診したところ乳がんが見つかり、全摘出と同時に乳房再建手術を受けた。その経験を生かし、麻倉さんはがんに関わるNPO法人を立ち上げ、検診の大切さなどを多くの人に訴えている。

麻倉さんにまずは、幼少期の食生活で思い出に残っていることを伺った。

私は幼少期、大阪に住んでいたので、週に1回はたこ焼きやお好み焼きといった粉物を食べていたのを覚えています。その頃の私はかなり偏食で、普通の牛肉はダメなのにひき肉は大丈夫とか、生野菜は苦味がダメでゆでたり炒めたりしたものは食べられるという感じでした。そのためカレーには、ひき肉を使ってもらっていました。でも、学校の給食は残さずに何でも食べていたので、自宅ではわがままを言っていただけなのかもしれませんね。

高校進学とともに歌手を目指して上京し、芸能事務所の練習生としての生活がスタートする。

東京では、芸能事務所の所有するマンションで一人暮らしを始めました。高校は弁当持参だったのですが、中学まで実家暮らしで料理を作っていなかったため、見よう見まねで毎朝お弁当を作るようになりました。お弁当といっても大したものではなく、ご飯に卵焼きやウインナー、野菜を少しプラスするくらいでした。そんな私の体調を心配した事務所社長の奥さまが、夜は自宅へ呼んで料理を食べさせてくれました。しかも奥さまは栄養関係のお仕事をされている方だったので、バランスをしっかりと考えてくれていました。

高校卒業後、曲折がありつつも21歳で念願の歌手デビューを果たし、TVドラマの主題歌に採用された楽曲が次々に大ヒットし、生活は一変する。

大ヒットTVドラマである「スチュワーデス物語」「スクール☆ウォーズ」の主題歌で、洋楽カバーの「What a feeling~FLASH DANCE」「HERO」などのヒットにより、寝る時間がないという生活を経験しました。当時のTVやラジオ番組は、公開放送として全国各地で収録することが多く、その合間にコンサートツアーもあると家を出てから1カ月帰れないということもありました。でも、やっと家へ帰れたと思っても、荷物を入れ替えてまたすぐに出掛ける生活の繰り返しですから、自分で料理を作る時間はありませんでした。仕事中の食事といえば、番組で用意してくれたお弁当や惣菜パンを自分で買って食べるという感じでした。

2017年にTV番組の企画で受診した人間ドックで乳がんが見つかり、全摘手術を受けることになる。

企画のお話をいただいたとき、主人が大病を患って入院したり、高齢になった大阪の両親を呼び寄せたりとバタバタしており、健康診断を5年くらい受診していなかったので、いいきっかけだと思って仕事を引き受け、そこで乳がんらしきものが見つかりました。その後、大学病院で精密検査を受けた結果、乳がんの告知を受けたのです。TV番組の企画で受診しましたが、結果が結果だけに公表するかどうかは私の判断に委ねられ、病院から帰宅時の電車の中で考えて、すべてを公表することにしました。それで、左乳がん全摘手術と乳房再建手術を発覚2カ月後に受け、退院2週間後には仕事へ復帰しました。

ある日の朝食は鶏肉と卵のおかゆ。だしは水炊き用の鶏もも肉の骨付きでとったもので、その鶏肉をほぐして入れ、多めのショウガと生塩のみで味つけし、あられと青ネギをトッピング。サラダは焼いた油揚げと水菜、トマト。香の物は、ぬか漬けキュウリを薄く切ったものと、ショウガを混ぜたしば漬け。(写真提供:麻倉未稀)

富田さん(右)とピンクリボンふじさわを立ち上げて、乳がんの正しい知識と検診の大切さを伝えている。(写真提供:ミュージックアプリケーション)

麻倉さんはステージで元気に歌うことで、早期発見ならば心配することはない、ということを身をもって人々にアピールしている。(写真提供:ミュージックアプリケーション)

家族のことも考えた早期検診が大切

病気を経験したことが、食事や生活スタイルなどを見直すきっかけになったという。

手術後は体調管理に気を遣い、入浴時は湯船に浸かり、自宅ではミネラル豊富なソルトを入れて血流対策を行っています。そして快適な睡眠を確保するため、就寝前にストレッチをして白湯を飲み、術後は肌がとても敏感になったので肌触りの良いガーゼのタオルケットやパジャマを愛用しています。私はホルモン療法なので、食事制限は特にありませんが、体が欲しているものでバランスの良さを考えます。例えば朝起きて、温かいものが食べたいと思ったときは、ショウガやネギをたっぷり入れたおかゆを食べています。

自身の経験を生かし、乳がん検診の受診率アップを目指し「ピンクリボンふじさわ」を立ち上げるなど、現在はがん患者の支援活動などを積極的に行っている。

自分の乳がんが発覚したとき、家族にも心配や不安を抱かせてしまいました。そこで、私が暮らす藤沢(神奈川県)の女性たちに乳がん検診の大切さを伝えるため、元プリンセス プリンセスの富田京子さんと「ピンクリボンふじさわ」を2018年に立ち上げました。私の経験を伝えて元気にステージで歌うことで、早期発見の大切さを参加者に感じてもらいたいと思っています。マンモグラフィはたしかに痛いですが、検診で何も見つからなければ家族と安心して暮らすことができるので、読者の皆さんもぜひ受診してください。また2020年には、NPO法人「あいおぷら」を設立し、がんについての正しい知識を伝えるとともに、患者さんとご家族、ご遺族のご相談や心のケアを行っています。

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2025年3月10日発行
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