気になる人の「気にする食卓」第75回 佐藤弘道

構成/編集部  写真/細田 忠

HEALTHIST INTERVIEW

佐藤弘道(さとう・ひろみち)

(タレント・医学博士)

1968年7月14日生まれ、東京都出身。TV番組「おかあさんといっしょ」で1993年4月から12年間、体操のお兄さんを務める。2002年に会社を設立して全国で親子体操教室などを開催しており、2015年には弘前大学大学院医学研究科博士課程を修了し博士(医学)を取得。

10年後、20年後を意識した食生活と
体を動かすことが大切

NHK Eテレ「おかあさんといっしょ」の第10代体操のお兄さんとして12年間活躍した、佐藤弘道さん。番組卒業後は、大学院で親子体操について研究し、日本初の親子体操博士となる。日本の健康寿命の延伸という自身の目標に向かって、親子体操教室を通じて健康の大切さを多くの人たちに伝えている。

幼少期から体を動かすことが好きだったという佐藤弘道さんに、当時の食生活について伺った。

幼稚園年長の体育の授業で柔道をやったのがきっかけで、近所の警察署内にある柔道道場へ通うようになり、中学1年生の初めまでは柔道をメインでやっていました。その間に、体操教室や水泳教室へも通うなど、基本的に体を動かすことが好きで、中学校ではソフトテニス部、高校では器械体操部に所属していました。

当時の食事は、父がいろいろなものを少しずつ食べるのが好きだったので、食卓には母の手作り小鉢がたくさん並んでいました。

高校で体操競技を始めるが大けがをしてしまい、大学では体操の演技を研さんする体操部へと入部した。

高校時代は器械体操部に所属しており、1㎏太っただけでジャンプや着地のとき、体への負担が大きくなってしまうため、自分のベスト体重である58㎏をキープするように食事をコントロールしていました。そのため、少しずついろいろなものをつまめる小鉢を中心とした食生活は役に立ちました。

しかし、体操競技中に頭から落ちて首に大けがをしてしまい、先生から「また同じことがあれば命に関わるよ」と言われました。そのため日本体育大学では、競技ではなく演技発表会を行う体操部へ入部しました。この体操部は、徒手体操、手具体操、組体操、組立体操などの演技を研さんするのが目的で、競技のように点数評価はありませんが、発表の場として全国大会や世界大会なども開催されています。その組体操などでは、土台と乗り手に分かれて演技をするのですが、僕は乗り手だったので土台の人に負担をかけないように、体重は58㎏キープを心掛けていました。朝食はしっかりと食べて、昼食は運動量に合わせて食べる量を決め、夕食は炭水化物を抜いていました。

佐藤さんは体操のお兄さんになってからも、自分のベスト体重をキープし続けている。

NHK Eテレ「おかあさんといっしょ」のオーディションを受けて合格し、25歳で体操のお兄さんになりました。それから12年間やらせてもらいましたが、番組収録だけでなく、週末には番組のファミリーコンサートなどのイベントで舞台に出演していました。自分の代わりはいないので、ジョギングや坂道ダッシュをしたり、通常の筋肉トレーニングをやって体を鍛えて、病気やけがをしないように気をつけていました。また、舞台では宙返りを披露することもあったので、体重は58㎏をずっとキープしていました。だから僕は、おなかいっぱいになるまで食べたことがないんですよ。

ある日の朝食は、白飯、味噌汁、焼き魚、納豆、鶏肉とサトイモとニンジンの煮物、ひじき、キャベツの千切りと海藻サラダ。朝にご飯を食べることが多く、納豆やサラダには酢を多めにかけるという。(写真提供:佐藤弘道)

ある日の昼食は、佐藤さんがタマネギ、ニンジン、ピーマンと野菜のみで調理したスパゲッティに生卵を添えて。サラダはキャベツの千切りに、ほんの少しのバターでキノコを炒めたもの。コーンスープ。(写真提供:佐藤弘道)

親子体操を科学的に研究分析

番組への出演終了後も、体操を伝えていける場が欲しいと考えて会社を立ち上げる。

番組卒業後も、体操を伝えていける場が欲しいと思い、出演中に自分の会社を立ち上げて「らくがきっ子体操クラブ」をスタートさせました。競技者育成が目的ではなく、子どもたちに運動遊びの楽しさを伝えるための教室です。運動嫌いの子どもというのは、スポーツ的な指導しか受けていないことが多いため、体を動かすことの楽しさとコミュニケーション能力を引き出すためのクラブです。幼稚園・保育園・こども園と契約し、我々が園に行って正課体育指導や課外体操クラブを行っています。この体操教室とは別に、全国を回って実施している親子体操教室もあります。

体操教室を通じて大学の先生と知り合った佐藤さんは、大学院で親子体操を科学的に研究して医学博士を取得する。

青森で親子体操教室をやっているときに弘前大学の先生と知り合ったのが縁で、同大学で健康について学び直し、大学院で親子体操を研究して医学博士を取得しました。日本初の親子体操博士となり、親子体操が体と心にどのように良いのかを、具体的な研究成果で示せるようになりました。ご両親も子どもと一緒に繰り返し体を動かすと、子育てストレス度、抑うつ度が下がり、睡眠の質が向上するなど、心の面の健康度がアップするということもわかりました。ぜひ小さなお子さんがいる方は、休みの日にゴロゴロしているのではなく、一緒に体を動かして遊んでください。

最後に医学博士から読者へ、運動と食生活に関するアドバイスを伺った。

今の僕の活動目標は、日本の「健康寿命の延伸」です。特に働き盛りで子育て世代の20代・30代の方は、自分自身が健康だと思っています。よって、健康に対して興味がありません。でも、生活習慣病が10年後に発症してしまう可能性があります。20年後、30年後のことを考えるのであれば、食生活や運動習慣を大切にすることです。

病気やけがをしてから「健康の大切さ」に気づくのでは遅いのです。健康なうちに健康に気づくことが大切なのです。僕は、日本の健康三原則「運動・栄養・休養」に気をつけています。年齢とともに運動量は減っていますので、食事の量を減らしています。そして、睡眠の時間を確保するようにしています。

今後も「お兄さん」と呼ばれるように、健康の維持にチャレンジしていきたいと思います。

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ヘルシスト 275号

2022年9月10日発行
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