気になる人の「気にする食卓」第81回 若本規夫

構成/編集部  写真/細田 忠

HEALTHIST INTERVIEW

若本規夫(わかもと・のりお)

(声優)

1945年10月18日生まれ、山口県出身。大学卒業後、警察官になるが1年で辞め、26歳で声優に。アニメ「サザエさん」の穴子さん、「ドラゴンボールZ」のセル、海外ドラマ「プリズン・ブレイク」のセオドア・“ティーバッグ”・バッグウェルなどの声を担当する。バラエティ番組「人志松本のすべらない話」のナレーションとしても活躍中。

早寝早起きと健康を考えた食事で
鍛錬を続けることが大切

アニメ「サザエさん」の穴子さん、海外ドラマ「プリズン・ブレイク」のセオドア・“ティーバッグ”・バッグウェルなどの声優として、また、「人志松本のすべらない話」の独特のナレーションでも知られる若本規夫さん。50歳を過ぎてから、声優の仕事の幅を広げるために新たな鍛錬に挑み、自分との闘いを常に追求している。

終戦後で食糧事情の厳しい時代に、幼少期を過ごした若本さんに当時の思い出を語ってもらった。

僕は山口県下関市で、終戦の約2カ月後となる1945年10月18日に生まれました。2人の兄が、極端な表現としてネズミくらいの大きさしかなかったと言っていたくらいの未熟児だったのです。当時は栄養補給も大変で、いつ死んでもおかしくないと言われていたのに、3日、1週間、1カ月、3カ月と生き延びました。その後、物心ついた頃に大阪府堺市へ引っ越したのですが、まだ食糧難で、食べたくても食べるものがなく、好き嫌いなどを言っている場合ではありませんでした。

高校時代までは勉強ばかりで運動とは無縁だったが、大学入学と同時に少林寺拳法部へ入部した。

東京の大学に進学が決まり上京するとき、まだ新幹線が開通していなかったため、大阪駅から東京駅まで特急で約7時間半かかっていました。それで車内で本を読もうと、駅の本屋で見かけた『秘伝 少林寺拳法』という本が面白そうだったので購入して、移動中に読みました。その1週間後、大学の入学式へ行ったらクラブやサークルの勧誘をしていて、その中に少林寺拳法部がありました。あの本のやつだと思って近づいてみたら、後ろからガバッとつかまれて入部希望の書類に名前や連絡先を書かされて、なんと入部してしまったのです。高校まで勉強中心の生活で運動とは無縁だったのに……。入部すると練習は本当に厳しくて、新入部員は60人いたのに夏の合宿で25人に減り、その後もどんどん減って最終的に6人しか残りませんでした。なんで自分が辞めなかったのかは謎なんですが、大学の勉強が嫌になっていたので、何か一つは大学で身に付けて卒業しないとダメだと思って少林寺拳法を頑張ったのでしょう。おかげで大学入学時はガリガリだった体も、卒業時にはがっしりしていました。この下地があるから、今でも元気なんだと思っています。

大学卒業後、就職するも組織の中で働くことは合わず、新たな仕事を模索中に声優の仕事と出合う。

自分の力を高められる新たな仕事を模索しているときに、新聞広告で声優教室の募集を知り、オーディションを受けたら合格したのです。それで教室に通い出したのですが、当時はまだ声優が足りなかったため、教室にいる段階から仕事が回ってきました。教室卒業後は、先輩の仕事を見ながらコツをつかんで自分らしさを磨いていき、徐々に仕事は増えていきました。でも、50歳手前で仕事がレギュラーだけしかなく、新規の依頼が来なくなっていたのです。そこで、これまで築いてきたものを一度壊し、声優としての鍛錬を根底から見直すことにしました。

旬の野菜や果物を使ったスムージーを毎朝飲んでいる。この日は、ビーツ、オクラ、ニンニク、セロリ、シイタケ、ニンジン、ナガイモ、リンゴ、キウイなどを使ったスムージー。(写真提供:若本規夫)

スムージーの他に、トマトジュース、フルーツ、納豆、黒ごま、ナッツなどを食べている。(写真提供:若本規夫)

声優として仕事を極めるための鍛錬

声優としての仕事の幅を広げるために鍛錬することで、独自の若本節が誕生したという。

呼吸法や体操などと同時に行えるメソッドを探し、大道芸、浪曲、声楽、尺八など、自分の声優の技量を上げるために役立つと思うことには何でも挑戦しました。でも、自己流では意味がないので専門家を訪ねて習ったのですが、その一つに神々を祝福するがあります。祝詞をあげるときには高音も出すため、声が総合的に鍛えられ、先生の講話も面白くて言葉のエネルギーを感じました。このように、いろいろ学んだことの中から自分に役立つ部分をアレンジして、自分なりのボイストレーニング法をつくり上げて実践しています。この鍛錬で、改めて呼吸の大切さを再認識し、声の質や出し方が変わっていくと、仕事の依頼も幅が広がり、ナレーションの仕事も来るようになりました。

鍛錬のために生活スタイルも見直し、早寝早起きとともに体に良い食事を心掛けている。

このような鍛錬を毎日行うため、朝は4時半に起きています。まず目が覚めたら、ベッドの上でストレッチを40〜50分やって、頭と体をスッキリさせます。それで、寝る前に水に浸しておいた根昆布白湯を飲んだ後に、祝詞を30〜40分あげ、呼吸法などをやっていると8時半くらいになるので、朝食にします。朝食は、ビタミンC入りのトマトジュース、豆乳入りのプロテイン、そして旬の野菜や果物をスムージーにしたものに酵素を入れて飲んでいます。その後に、納豆、タマネギ、黒ごま、ナッツ、干しぶどう、そしてオリーブオイルをかけたフルーツを食べています。昼は軽めにそばを食べることが多く、夜は酒を飲みながら刺し身を食べるくらいで、20時半には寝ます。こういう生活スタイルを何十年も続けており、17時以降の仕事は受けないようにしています。

最後に、若本さんから読者に向けて食生活に関するアドバイスを伺った。

早寝早起きを実践して、食事は時間になったから食べるのではなくおなかが空いたら食べるようにしたほうがいいと思います。また、排泄が良くなる食事を心掛けてください。僕は、先のような食生活を続けているため便通が良く、1日3回は出ています。

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ヘルシスト 281号

2023年9月10日発行
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