長寿を楽しく生きるために
2024年に厚生労働省が発表した日本人の平均寿命は、男性が81.09歳で女性が87.14歳、100歳以上の人口も54年連続で増加して9万5119人(総人口比0.077%)と、まさに人生100年が夢物語ではなくなってきたことを感じる数字が並んでいます。
この長寿社会の到来に向け、ただ長寿を望むのではなく、健康で長寿であることを望むにはどうすればよいのかを説いたのが、105歳で亡くなるまで、医師として聖路加国際病院などで現役を続けた日野原重明先生(1911〜2017年)でした。
日野原先生が健康長寿のために推奨したのは、まずは禁煙、節酒。そして塩分を摂りすぎないようにすることや野菜を十分に摂ること、カロリー摂取の制限など食生活に注意すること。肺機能を良くするため呼吸法を身につけること。さらには幾つになっても新しい何かを始めてみようという意欲を持つことなどでした。
実は日野原先生は、それまでにもさまざまな改革や提言を行ったことが知られていて、1954年には、民間病院として初の人間ドックを導入し、1981年には、「成人病」と呼ばれていた高血圧や糖尿病を「習慣病」と呼ぶことを提案しています。1996年に、「生活習慣病」という言葉は政府が認める正式名称となり、病気の多くが生活習慣を改善することで予防できると、人々に認識させたのです。日本初のホスピス専門病院を設立し、終末期医療の確立、普及にも尽力しました。
健康長寿への提言は、いわばそれら医師として歩んだ経験の集大成ともいえるものだったでしょう。100歳を超えても、日本各地からの求めに応えて1年に150回もの講演に出かけ、命の大切さ、生きる喜びを伝え続けました。生活習慣を見直し、上手に年を重ねて、ただ命を延ばすのではなく、命を深め、楽しく生きてほしいという日野原先生の声が聞こえてきます。
さまざま分野でAIによる大きな変革が始まっています。医療の現場でもAIが広く利用されるようになってきました。
人工知能AIの概念は、1950年代にコンピュータサイエンスの父とも呼ばれるアラン・チューリングによって提案された「チューリングテスト」を基盤としているといいます(巻頭インタビュー)。このテストでは、機械がどれぐらい人間に近い思考を得ることができるかを判定することができ、言い換えれば、高い能力を獲得した機械は、より「人間らしく」振る舞えるということになるのです。ちなみにこのテストで高得点を獲得した最新のGPT4.5は、70%以上のテスト参加研究者が人間だと認識したという報告もあります。
現時点で、医療においてAIの採用が最も進んでいる分野は画像の解析・診断でしょう。従来は医師がすべてを担うため、いわゆる「見逃し」はどうしても不可避でしたが、AIを使った画像診断システムの導入は、そうした「見逃し」リスクの軽減に効力を発揮します。
AIはがん治療にも利用され始めています。がんは遺伝子変異が引き起こす病気で、遺伝子の変異は常時、多数発生しています。そんな状況の中、がんの発生に直接かかわるドライバー遺伝子を見つけ出すには多大な労力を必要としていました。今ではAIのちからを借りて比較的容易に発見できるようになりました。こうして診断が難しい病気や、人間が見落としがちな病変などに対し効果的に利用できるため、AIは医師の確かな補佐役としても期待されているのです。
一方、倫理的課題が少なからず存在しているのも事実で、医療現場では、AIは人間に置き換わるツールでは決してなく、あくまで臨床上の判断支援ツールとして過剰な依存を避け、医師本来の機能を損なわないよう細心の注意を払う必要があると指摘されています。
AIは確かに、私たちの健康長寿に大きく貢献するようになるかもしれません。しかしAIは、私たちに代わって生活習慣を改善してくれるわけではないのです。





