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ヘルシスト 297号

2026年5月10日発行
隔月刊


四群点数法

香川綾(1899〜1997年)は、昭和の初めから平成にかけ、日本の栄養学の発展と普及に努めた栄養学者で、「何をどれだけ食べるか」を示した「四群点数法」の提案者として思い出す人もいるでしょう。

綾は母親を病で亡くして医者を志し、東京女子医学専門学校で学んだ後、早くから栄養問題に着目していた東京帝国大学の島薗順次郎教授の内科学教室に入局。当時、結核と並ぶ恐ろしい病であったの患者が、胚芽米を摂ることにより薬も用いずに回復していくのを目の当たりにします。その際感じた「食事の摂り方一つが、こんなにも健康を左右するのか」という驚きと喜びは、いかに人々の生活に栄養学の知識を生かしていくかという課題に取り組む源となったといいます。

やがて、正しい栄養知識とおいしい料理の普及を目指して、同じ志を持つ夫と共に女子栄養大学(現・日本栄養大学)の前身となる「家庭食養研究会」を設立します。それは、医学と栄養学と料理を結びつけ、理論と実践を並行して学ぶことができる、画期的な学舎でした。

その後も幾多の困難を乗り越えながら、綾は後進への道を開き、料理を計量化して初心者でも再現できる料理カードを作成したり、計量カップと計量スプーンを考案したり、雑誌「栄養と料理」を創刊し、栄養クリニックを開設するなど、終生、人々の栄養改善に向けて心を砕きました。

戦中・戦後の栄養不足、高度経済成長期以降の栄養過剰と、時々の日本の栄養事情に向き合ってきた綾は、『栄養学と私の半生記』に、栄養学はその時代の食生活や環境に合わせて、実行されやすい形にすることが大切だと記しています。また、知人に宛てた手紙では、栄養学と日常の食事との間は、いまだに大きな距離を残したままである、と気にかけています。

綾は98歳で亡くなる直前まで「食事日記」をつけていました。慣れや勘に任せず、日々食事の内容を記録し確かめていたことは、日常である食事の大事さと、それ故の難しさを、身に染みて感じていたからなのだと思います。


四群点数法は、栄養成分の機能に基づいて食品を4つの群(グループ)に分け、各食品に点数(1点=80㎉)をつけることで、適切な摂取カロリーが容易に把握できる仕組みになっています。それぞれの群から得られるエネルギーを加算すると、1日に必要な栄養素をほぼ満たせるよう設計された、バランスの良い食事を目的とする食事法です。乳・乳製品・卵などの第1群の食品はカルシウムやたんぱく質が豊富で、第2群(魚介・肉類・豆・豆製品)は主に良質なたんぱく質やミネラル、第3群(野菜・芋類・果物)はビタミン、食物繊維などを含み、第4群(穀物・砂糖・油脂・品)はエネルギー源です。

基本は、第1群から第3群の各3点、合計9点に第4群の点数を加えるというもので、現在は第1〜第3群の9点を満たしていれば主要な栄養素はほぼ確保され、あとは活動量や体格に合わせて第4群でエネルギー量を調整します。栄養の専門知識がなくても誰でも実践できる、優れた食事法なのです。

乳・乳製品・卵などが第1群に置かれた背景には、戦後の学校給食で脱脂粉乳が著しい効果を上げていることを実感した香川綾が、良質なたんぱく質源として牛乳を日本人の食事に加えたいという思いがあったといいます。しかし時代とともに食生活が大きく変化するなか、四群点数法の点数配分やそれに該当する食品重量が現代における適切な栄養素量やエネルギー量となっているか——日本栄養大学では、今も検証が続けられています。

さて、小誌は今号より誌面を少々刷新いたします。松﨑恵理氏(日本栄養検定協会代表理事)のエッセイ「食と健康 とっておきの話」と「間違いさがし」がスタートします。

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