医学 特集 脳と体と心 脳腸相関をコントロールする「因子」と「細胞」の存在 脳と腸が双方向で影響し合う「脳腸相関」に関わる良い腸内環境をつくることは、そう簡単ではない。しかし腸内細菌叢をコントロールして適切な状態を保つ因子の存在が明らかになり、小腸にあるパネト細胞がその因子と関わっていることがわかってきた。このメカニズムの解明によって、心身の健康にこれまでとは違う新しいアプローチが可能になるという。
生物 野本教授の腸内細菌と健康のお話23 肥満やがん免疫でも注目される腸内微生物の関わり 「肥満」と腸内フローラ異常に関する学術文献数は年次ごとに右肩上がりに増えていることをターンボー博士が報告している(図)。この状況は、本コラムが開始された2018年から現在まで全く同様であり、我々の健康と腸内フローラに関する学術研究の進展を象徴している。
生物 野本教授の腸内細菌と健康のお話19 “植物性乳酸菌”と“動物性乳酸菌” 正式な分類ではない!? さまざまな発酵食品の基幹微生物である乳酸菌は、我々の食生活を通して最も身近に関係のある細菌といえる。ただし、「乳酸菌」とは、生物学的な分類上の特定の菌種を指すものではなく、炭水化物の発酵によって糖類から多量の乳酸を産生する菌群を示す一般的な呼称とされている。
生物 野本教授の腸内細菌と健康のお話18 「潰瘍性大腸炎」の治療にも!? バラエティに富む大腸菌 我々にとって最もなじみの深い細菌といえる大腸菌(Escherichia coli )は、ドイツの小児科医Theodor Escherich(1857~1911年)により1885年に母乳栄養児の腸内由来の細菌として発見された。我々の腸内に常在する「腸内細菌科(Family Enterobacteriaceae)」のEscherichia属に属する通性嫌気性のグラム陰性桿菌である。
生物 野本教授の腸内細菌と健康のお話17 毒素もビタミンも産生 腸内細菌のさまざまな代謝能 腸内細菌はさまざまな代謝作用を介して我々の健康に大きな影響を及ぼしている。腐敗産物(アンモニア、硫化水素、アミン、フェノール、インドールなど)、細菌毒素、および発がん物質(ニトロソ化合物、エポキシド体など)の産生や、胆汁酸代謝(一次胆汁酸から二次胆汁酸への変換、抱合胆汁酸の脱抱合など)が過度になると、生体に障害を与える。一方で、酢酸、プロピオン酸、および酪酸などの短鎖脂肪酸を含む有機酸やビタミン(例えばビフィズス菌ではB2、B6、B12、C、葉酸など)の産生は、我々の健康維持に重要である。
生物 野本教授の腸内細菌と健康のお話16 コアラはなぜユーカリしか食べないのか 前号に引き続き、さまざまな動物種における健康と腸内細菌の関係を紹介したい。主にオーストラリアの東部、南東部に生息する有袋類であるコアラはユーカリの葉しか食べない偏食性を有する。
生物 野本教授の腸内細菌と健康のお話15 パンダとも害虫とも共生する微生物 微生物と共生する動物種の範囲は広い。筆者はもっぱらヒトやマウスの腸内フローラを研究対象としてきたが、3年前の動物共生微生物学研究室の立ちあげに際して必然的に研究対象が広がった。