暮らしの科学 第72回 足元から健康長寿! かかとのガサガサ対策

文/茂木登志子  イラストレーション/古泉香苗

いよいよ乾燥シーズンの到来だ。お肌の潤い保持に気を使う季節だが、足元にも注意を向けてみよう。かかとがガサガサになっていないだろうか? 今回はかかとのガサガサ対策を追求したが、それは足元からの健康長寿を促す大切なケアであることが分かった。

〈今月のアドバイザー〉高山かおる(たかやま・かおる)。済生会川口総合病院皮膚科主任部長、東京科学大学医学部臨床准教授。1995年、山形大学医学部卒業。皮膚科専門医、医学博士、日本フットケア・足病医学会理事。足と爪のケア外来にて、専門的な治療にあたる。2015年に「100歳まで自分の足で歩ける社会づくり」を目指し足育研究会を設立。多業種と連携し、足の大切さ、自分の足を自分で守るための知識を伝えている。『「ガサガサかかと」が危ない! 足の手入れが健康寿命を延ばす』(家の光協会)『足と爪のトラブル20 ケアのポイント』(日本看護協会出版会)など著書多数。

洗ったばかりのラグに小さな赤い点が見える。そういえば、さっきガサガサになっていたかかとのささくれをむしり取った。足の裏を見る。かかとのささくれがあった所から、わずかに出血していた。慌てて足の裏に小さな傷用テープを貼り、汚れたラグの洗濯に取りかかった。

冬になると乾燥シーズンということもあり、かかとがガザガサにならないように毎晩クリームを塗って保湿する。だが、まだ汗ばむこともある日々。保湿などのケアはまだしなくてもいいと思い込んでいた。冬が来る前に、なぜ、早くもかかとが乾燥してしまったのだろうか。

ちなみに、かかとがガサガサしている状態とは、皮膚が乾燥して硬くなり、白っぽく粉を吹いたように見える状態や、角質が厚くめくれてひび割れている状態を指す。

インターネットでかかとのガサガサ対策について検索してみると、かかとをツルツルにする男性用のケアグッズが目に入ってきた。どうやらかかとのガサガサは、成人男女共通の健康課題のようである。そこで今回は、ツルツルすべすべのかかとを目指して、かかとのガサガサ予防と対策を追求することにした。

かかとがガサガサになる理由

かかとのガサガサについて教えてくれたのは、済生会川口総合病院皮膚科主任部長の高山かおるさんだ。皮膚科の専門医である高山さんは、同院の皮膚科でフットケア外来も担当しているのだ。

高山さんによると、かかとがガサガサになるのは、いくつかの理由があるのだという。1つ目は、構造的な特徴だ。

「かかとは厚い角質で覆われ、外からの力に勝てる力を持つ構造になっています。この構造を守るために、硬くなる。つまり、部位的な特徴です」

2つ目は、皮膚のターンオーバーのサイクルが遅くなることだという。

「健康的な皮膚の内部では、古くなった細胞は上に押し上げられて角質となり、剥がれ落ちていきます。このように、肌の細胞が一定のサイクルで生まれ変わる新陳代謝をターンオーバーといいます。しかし、なんらかの問題でこのサイクルが乱れて遅くなると、古い角質が剥がれることなく表皮に蓄積されて、厚く、硬くなってしまいます」

加齢はターンオーバーのスピード低下につながる。

3つ目の理由は、保湿成分の不足だ。

「そもそも足の裏には毛穴、つまり皮脂腺がありません。汗と皮脂は皮膚を覆う保湿成分です。皮脂腺がないということは、皮脂が分泌されないので汗の成分しかありません。保湿成分が不足するため乾燥しやすいのです」

足の構造自体に、かかとがガサガサになりやすい理由があるというわけだ。

「足の環境にもガサガサの原因が潜んでいます。特に暑い時期はサンダルを履いたり、屋内でも靴下を履かないで素足のままだったり。素足だと乾燥しやすく、足裏への摩擦・衝撃・圧力が増すので、角質が厚くなります」

なるほど。思い当たることが多い。

「間違った靴の履き方もガサガサにつながります。かかとが靴の中にしっかり収まっていないと、かかとが擦れて、摩擦が起きやすいからです。すると、肌を保護するために角質が厚くなります」

これも思い当たる。ひもで結ぶタイプの靴を常用しているのだが、いちいちひもを解いたり結んだりするのが面倒で、ひもを結びっぱなしで着脱していたのだ。

ガサガサの原因には、疾患が関係することも。いわゆる水虫だ。

「水虫は、菌という真菌(カビ)が足の角質層に感染して起こる疾患です。白癬菌がかかとに感染すると、粉を吹いたように乾燥してガサガサ、あるいはゴチゴチと硬くなる症状が見られます。このように白癬菌が原因で角質化している場合は、皮膚科を受診しての治療が必要です。かかとのガサガサがひび割れて痛みを伴う場合やいくらケアしても治らないようなら、白癬菌感染の可能性があるので受診しましょう」

図1 かかとがガサガサになる理由かかとは足の構造や足を包む環境によって硬くなりやすい。

たかがかかとのガサガサと、侮ってはいけない。透析を受けている人、そして持病に心疾患や糖尿病を抱えている人は、かかとがガサガサになりやすいのだという。

「これらの疾患を抱えている人に共通しているのは、体に栄養を送る動脈の血管が詰まっている可能性があるということです。足の皮膚に十分な血液が流れていかないと、規則正しかったはずの新陳代謝が乱れるので、ターンオーバーのサイクルも遅くなってガサガサになりやすいのです」

しかも、ガサガサから深い傷ができたり、細菌が侵入して重篤化するリスクがあるのだ。

予防と対策は足を洗うこと

原因が分かれば予防も対策も簡単だ。ガサガサの原因になることをしなければいいのだ。

●かかとの保湿をする。

●靴下を履く。

●適切な靴を選び、正しい履き方をする。

●水虫の疑いがあれば皮膚科を受診する。

●糖尿病などの持病がある場合には、血行を促進し、感染症に注意する。

自分の足元を見ながら、保湿をして、靴を履いたらしっかりとひもを結べばいいのだと、単純に考えていた。ところが……。高山さんからの助言は、予想外のことだった。

「もちろんそうしたケアも必要ですが、一番大事なのは、足をよく洗うことです!」

高山さんの助言は続く。

「顔を洗うように、足も洗いましょう!」

え? お風呂に入ったら、みんな足の裏までしっかり洗っていると思うけど。

「いえいえ、意外にきれいに洗えていないものです。汚れや古い角質が残っているのです」

チェックポイントは次の3つだ。爪と指の間。指と指の間。足裏の指の付け根。

「こういう所にたまりやすい汚れや古い角質をきちんと除去する。それが足をきれいにするということです」

高山さん直伝の、足をきれいにする方法は次の通りだ。

〈基本の洗い方〉

①基本は手で洗う。
②少量の石けんをよく泡立て、その泡で足全体を包むように丁寧に洗う。
●足指の間を洗う際は、手指を差し込んで1本ずつ洗う。
●汚れや角質がたまりやすいは、毛が細めの歯ブラシや足洗い専用のブラシを用い、汚れや古い角質をやさしく除去する。
③石けんで洗った後は、爪と指の間や指と指の間に石けんが残らないように、しっかりと洗い流す。

〈足を洗った後のケア〉

④水分をしっかり拭き取る。
⑤すぐに保湿する。

図2 足を洗うときのポイント自分の手でやさしく足を洗おう。足指の間は手の指を差し込んで1本ずつ洗う。汚れや古い角質がたまりやすい爪溝は歯ブラシなどで念入りに。

洗っておしまいではない。その後のケアにもちゃんと理由があるのだ。

「拭き取りが不十分で水分が残っていると、蒸発する際に皮膚表面を冷やして、皮膚を守る皮脂膜が作られにくくなります。また、拭き残しがあると、残った水滴が菌増殖の温床になるからです」

バスマットを踏むのではなく、タオルで拭く。だが、ゴシゴシと拭いてはいけない。刺激は角質を厚くするからだ。タオルで足を包むように、やさしく、丁寧に水分を拭き取る。これが基本だ。

「足を清潔にしたら、すぐに保湿をしましょう。なぜなら皮脂が洗い流されるので、洗い上がりの足は一時的に乾燥しやすい状態になっているからです」

だから洗顔後にローションやクリームを塗るように、足にも保湿成分を補充してあげる必要がある。

保湿剤には、硬くなった角質を柔らかくする作用のある「尿素入り」のクリームや、乾燥対策に効果的な「ワセリン」、血行を促進する「ビタミンE」が配合されているクリームなどがある。

保湿剤はたっぷりと、皮膚を傷めないようにやさしくすり込むのがコツだ。かかとだけではなく足裏全体と足指にも保湿剤を塗るといい。また、保湿後には靴下を履くと有効成分が浸透しやすくなるという。

「大事なことは、毎日、足を洗って保湿する。これを続けることです。洗顔や歯磨きと同じで、一生続けてください」

図3 保湿剤はやさしくすり込む入浴後あるいは足浴後、丁寧に水気を拭き取ったら、まだ皮膚がしっとりしているうちに保湿する。かかと、足指、足裏全体にクリームを塗る。爪の周りも忘れずに。

フットケア習慣を身に付けよう

ここで改めて、足を洗うことがなぜ重要なのか、その理由を尋ねた。

「足を清潔に保つことは、あらゆる足の病変を予防する第一歩だからです」

軽い炎症程度なら、足をきれいに洗っているうちに治る場合も多くあるという。それだけではない。

「毎日自分の足に触れて洗うことで、ちょっとした変化にも気づくことができ、トラブルや異変を早いうちに見つけることができます」

高山さんによると、足の小さなトラブルを放置したままにすると、下肢機能の低下につながるのだという。足のトラブルとは、タコやウオノメ、巻き爪、外反、足裏の痛みなど、足に起こるさまざまな不調や変形の総称だ。また、下肢機能の低下とは、分かりやすく言えば、立ったり歩いたりといった日常動作が困難になる状態を指す。

「足のトラブルと下肢機能についての研究結果から、年代を問わず、足のトラブルが下肢機能の低下をもたらしていることが明らかになっています」

2025年に厚生労働省が公表した「令和6年簡易生命表」によると、日本の平均寿命は、男性が81.09歳、女性が87.13歳で、女性は40年連続で世界1位だ。その一方で、健康上の問題がなく、自立した生活を送れる健康寿命は、男性が72.57歳、女性が75.45歳となっている。

足にトラブルを抱えていると、「歩行困難→活動量の減少→筋力低下→虚弱状態→転倒→骨折→寝たきり」という悪循環につながりやすい。

「歯科領域では、の健康増進と健康長寿の実現を目指して、80歳になっても自分の歯を20本以上保とうという、8020(ハチマルニイマル)運動を展開してきました。その結果、虫歯や歯周病などになってから治療するのではなく、病気を未然に防ぎ、生涯を通じて健康な歯を保つ予防歯科が広がりました。足も同様に大切にして、最後までしっかりと自分の足で歩けるようにしたいと思いませんか?」

思います!

フットケアに携わるエキスパートたちの中には「100歳まで2本の足で歩こう」と、「1002(イチマルマルニ)運動」を提唱する人々もいるのだという。

かかとのガサガサをきっかけに、足をきれいに洗うことを通して異変を見つけて対策することの重要性を学んだ。まだ若いから、もう高齢だから、男だから、かかとがガサガサしていないから——そういう読者もぜひこの機会に、足を清潔にすることの意義を理解し、自分の足へのケアを始めてみよう。

入浴できない場合は足浴

足洗いは、浴槽に浸かってから行うといい。角質がふやけて剝がれやすいからだ。入浴できないときやシャワーで済ませてしまいがちな人は、足浴がおすすめだ。足浴用のフットバスまたは大きめの洗面器に湯を張り、5分ほど両足を足首まで浸す。その後、石けんをよく泡立てて洗えばいい。

足洗い用ブラシ

足洗い用のブラシが市販されている。代わりに歯ブラシを使ってもいい。ただし、皮膚を傷つけないように柔らかく、毛先が真っすぐな新しいものを使おう。また、白癬菌感染などの予防のためにも、家族共有ではなく、1人1本、自分専用の足洗いブラシを用意しよう。

保湿剤の選び方と使い方

保湿剤は自分の好みのものでかまわない。「長く続けることが大事なので、あまり高価すぎず手に入りやすいものがよいでしょう」というのが高山さんの助言だ。片足の裏側全体に使う量は「手の人差し指の先から第1関節の長さまで出した量が目安」だという。塗る際はすり込まないで「薄く、広く、皮膚になじませるように」。なお、セルフケアで症状が改善しない場合は、早めに皮膚科を受診しよう。

靴下でガサガサ予防

靴下を履くとガサガサを予防できる。その理由について高山さんは「靴下を履くことで、足の水分を閉じ込めて保湿効果を高めることができます」と教えてくれた。保湿剤を塗った後に靴下を履くと、さらに効果が高まる。シルクの靴下は保湿効果があるので、ガサガサ予防になる。また、かかとに保湿シートを内蔵した、かかとケア用靴下もある。

ヤスリは削りすぎに注意

かかとのガサガサした部分を削ってケアしたい場合は、軽石でゴシゴシこするのは禁物だ。「細かい目の角質用ヤスリを使って、一方向に削りましょう」というのが高山さんの助言だ。なお、削りすぎは逆効果になる。頻度は週1回程度が目安だ。入浴や足浴で角質を柔らかくほぐしたら、少し乾燥させてから行う。ヤスリでかかとを削った後は保湿が必須だ。

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ヘルシスト 294号

2025年11月10日発行
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