生物 細胞と遺伝子 第23回 セロトニンは努力行動の楽観と悲観に関与する 「幸せホルモン」として知られるセロトニンは脳内の神経伝達物質の一つで、脳の広い範囲に作用して精神を安定させる作用を持つが、具体的なメカニズムは解明されていない。しかし最近の研究で、目標達成のプロセスにおける努力行動の過程で、「きっとうまくいく」という楽観と「どうせだめだ」という悲観の調整にセロトニンが関与しているという研究成果が明らかになった。つまりセロトニンは結果よりもむしろプロセスに作用するという。幸福感は努力過程にもある。
生物 野本教授の腸内細菌と健康のお話23 肥満やがん免疫でも注目される腸内微生物の関わり 「肥満」と腸内フローラ異常に関する学術文献数は年次ごとに右肩上がりに増えていることをターンボー博士が報告している(図)。この状況は、本コラムが開始された2018年から現在まで全く同様であり、我々の健康と腸内フローラに関する学術研究の進展を象徴している。
食 特集 進化する日本の養殖 浮沈式生け簀とスマート漁業が開く未来 沿岸養殖は適地の飽和・赤潮の頻発・海水温上昇という三重苦に直面し、養殖域の沖合展開が急務だ。空気と海水を均等置換する浮沈式生け簀は、台風級の高波にも耐えうる沖合養殖を実現。沿岸域では、深層水を循環させる海面半閉鎖循環式養殖システムが赤潮・寄生虫対策に有効だ。さらに、洋上風力発電との連携や多栄養段階統合養殖(IMTA)、センサーやAIを活用したスマート漁業を組み合わせ、エネルギー・食料・生態系保全を統合した持続可能な沖合海域の創出を目指す。
医学 特集 予防医学の現在地 個別化予防・医療を目指すゲノム医療 ゲノム医療は、遺伝的素因と環境因子の相互作用を網羅的に解析する研究を通じて得られた知見を活用することで、疾患感受性、薬剤応答性、副作用リスクなどを個人レベルで予測し、個別化予防・医療の実現を目指す。バイオバンク・ジャパンは27万人規模の生体試料とオミックスデータを基盤に、アルコール代謝関連遺伝子(ADH1B・ALDH2)の多型と喫煙・飲酒が複合した場合の食道がん発症リスクが健常者比約190倍に達することを解明。社会実装に向けた取り組みが続く。
生物 特集 知られざる粘菌の世界 細胞性粘菌は「敵と味方を区別」する 脳も神経系も持たない変形菌が「かしこい単細胞」として注目を集めた。同じく粘菌と呼ばれる細胞性粘菌もまた、異なる化学シグナルで「敵と味方を区別」する巧妙な戦略を持つ。土壌表層に生息する細胞性粘菌は、同じ生息域の自活性線虫を胞子の運び屋(vector)として誘引する一方、地中深くに潜み運び屋に適さないネコブセンチュウは忌避させる。この仕組みを応用することで、最重要病害虫のネコブセンチュウから農作物を守りつつ、高毒性農薬依存から脱却する道が開ける。
生物 特集 ここまで分かったエピジェネティクス 獲得した性質が次世代に伝わる可能性 エピジェネティック修飾はDNAの塩基配列に影響を与えずにメチル化などで遺伝子の働きを調節することから、新たな個体が生まれるときにリセットされ、次世代に受け継がれないとされてきた。しかし受精後、子の体細胞で再びメチル化が始まるという研究結果が得られた。つまり、DNAのメチル化そのものが直接受け継がれているのではなく、メチル化を再起動させるメカニズムが機能したのではないかという。親が獲得した性質が次の世代に伝わる可能性は否定できない。
生物 野本先生の腸内細菌と健康のお話50[最終回] 目指すべき腸内フローラやプロバイオティクスの「すがた」や「はたらき」 本コラムでは「腸内フローラと健康」に関わるトピックを筆者の経験も絡めて紹介してきたが、初回(247号/2018年1月10日発行)から本号まで足掛け9年にわたる執筆内容を振り返り、この領域の研究や開発の今後について考えてみたい。
医学 特集 注目される性差医療 高齢女性のくも膜下出血はエストロゲンの減少が一因 発症率6.5%のくも膜下出血は、脳梗塞や脳出血と比較すると発症頻度が低い脳卒中だが、死亡が3分の1、重い後遺症が残るケースが3分の1と、重篤な疾患として知られている。大半は脳動脈瘤の破裂によるもので、発症数は、40代前半以降で女性が男性をわずかに上回り、60歳を超えると女性が圧倒的に多くなる。閉経後の女性で増加していることから、女性ホルモンの急減が関わっているとされる。脳動脈瘤には高血圧や喫煙が強く関与するため、生活習慣への留意が最善の予防だという。
医学 特集 注目される性差医療 女性の健康管理をサポート——症状把握・受診支援アプリ 生物学的な性の違いを考慮した性差医療が注目されている。従来、男性を標準として研究や治療が行われることが多く、男女で症状の現れ方、治療への反応、副作用などの違いが見逃されてきた。性差医療は、それぞれの性に適した診断・治療・予防を行うことを目指す。女性と医療者をつなぐことで症状の情報が効率よく把握できる、症状把握・受診支援ナビゲーションシステムWaiSEが開発されている。性差医療のスペシャリストで、WaiSEの開発者でもある片井みゆき医師に話を聞いた。
自然 特集 「土壌」の謎に迫る! 土の分布が一目で分かる「日本土壌インベントリー」 どこに、どんな土が存在しているのか——そのような疑問に答えてくれるのが、「日本土壌インベントリー」というウェブサイト。農研機構が開発した日本全土を網羅する「土壌情報閲覧システム」をデジタル化したもので、農耕地以外の土壌も加えると381種類にも及ぶ日本の土壌分布が一目で分かる。農作物の生産は土壌に大きく影響されるため、栽培に適した土壌を知ることは極めて重要だ。土壌資源の安定的な確保は、国の食料安全保障のうえでも第一に考慮すべき課題なのだという。